採用活動は「ストーリー」であり、最も強い武器は「企業ブランディング」
採用活動において「何が一番大切なのか」という問いに、明確な正解はありません。企業規模、採用人数、職種、業界、市況によって、最適なやり方は変わります。ただ、私たちがこれまで多くの採用現場に関わる中で、どんな条件下でも共通して重要だと感じてきた考え方があります。
まず1つ目は、採用は一つの物語、ストーリーとして設計する必要があるということと、そしてもう一つが採用における最も強力な武器は企業ブランディングであるということです。
この二つは別々の話のようでいて、強く結びついています。
採用は「ストーリー」である
候補者が企業に対して持つ、「興味度」や「志望度」を、仮に数値化できるとしたらどうでしょうか?
説明会に初めて参加した後のタイミングで、企業への興味度がいきなり100%になることは、ほとんどないはずです。多くの場合は数%、高くても10%前後からのスタートになると思います。
そこから内定承諾に至るまでに、候補者の気持ちを少しずつ高めていく必要がありますが、この興味度が一気に跳ね上がるケースは、現実的にはほとんど存在しません。リーマンショックやコロナ禍のような大きな外部要因がない限り、劣勢だった候補者の意思決定が、ある日劇的に変わることは稀なはずです。
だからこそ重要になるのが、説明会、面接、面談といった採用活動の各フェーズをどう設計するか?どう対応するか?という視点が重要になってきます。
それぞれを単発のイベントとして捉えるのではなく、候補者との接点を一本の線として捉え、少しずつ確度を積み上げていく必要があります。
説明会は会社のことを説明をする場であると同時に、「この会社をもう少し知りたい」と思ってもらう場であり、自身の理解を深堀・修正してもらう場。一次面接は選考であると同時に、「この会社で働くイメージが湧くか」「こんな人がいる会社なんだ」と感じてもらう場。二次面接、最終面接も同様に、それぞれが物語の一場面として機能します。
志望動機よりも「背景」を見る
昨今、面接で「志望動機」を聞いた際に、非常に綺麗に整理された回答が返ってくることが増えています。AIの活用も一般的になり、言葉そのものから本音を読み取ることは、年々難しくなっています。
だからこそ私たちは、志望動機という“結果”よりも、そこに至るまでの背景を重視することが大切だと考えています。これまでの人生においてどんな気持ちや考えでその選択をしてきたのか?どんな場面で悩み、何を基準に意思決定してきたのか?そうした話の中にこそ、その人が大切にしている価値観や、仕事に求めているものが表れます。
直接言葉にされない懸念点についても、会話の流れや反応の中から丁寧に拾い上げていったり、面接とは別のシーンで回収したりするようにします。
「彼は何を大切にしているのか。」「彼女が心配しているのはなにか?」
理想は、それらを理解した上で、その人にとって意味のあるストーリーを描いていくことです。我々は、採用担当の役割を「入社までの物語を一緒に描く編集者」のようなものだと考えています。
その物語を最後まで読んでもらえたとき、内定承諾の確度は自然と高まります。そして、たとえ承諾に至らなかったとしても、双方が納得できる結末を迎えることができれば、その出会いは決して無駄にはなりません。
採用における最強の武器は「企業ブランディング」
もう一つ、私たちが常にお伝えしているのが、「採用において最も強力な武器は企業ブランディングである」という考え方です。
どれだけ採用フローを工夫しても、企業が持つイメージやブランド力の差は、採用の現場で如実に表れます。
大手企業が不祥事などでマスコミに取り上げられることがあっても、採用の場では依然として強さを発揮しているのが現実で、そのブランド力の強さを身に染みて感じている採用担当者も多くいることでしょう。
特に、親御さんが就職に影響力を持つ現代においては、企業名や業界イメージが与える影響は決して小さくありません。世代ごとに就職環境や人気業界は変わりますが、企業が長年かけて築いてきたブランドイメージは、そう簡単には変わらないものです。
さらに大きな枠組みで見れば、「業界」そのものが持つイメージに邪魔されることもあります。業界全体の印象に関しては、一社の努力だけで変えることは正直なところ非常に困難です。
だからこそ重要なのは、「この会社は違う」と思ってもらうことです。
採用プロセスをブランディングに繋げる
新卒採用や中途採用の過程で、最終的に辞退となった人、不採用となった人。
こうした「結果的に自社で働くことにならなかった人」への向き合い方は、企業ブランディングにおいて非常に重要です。
インターネット上の広告や口コミも確かに影響力はあります。しかしそれ以上に、「実際に会社に触れた経験」や「社員と話した記憶」は、強く印象に残ります。
「入社はしなかったけれど、対応が丁寧だった」
「面接を通じて、会社の考え方がよく分かった」
「いつかまた縁があれば、もう一度受けてみたい」
こうした印象の積み重ねが、潜在的な入社候補を生み、彼ら彼女らが周囲に伝える機会などがあれば、それは企業ブランディングの強化になっていきます。
採用担当者個人の魅力だけに依存するのではなく、選考プロセス全体を通じて自社へのロイヤリティを高めていく。その積み重ねこそが企業ブランディングであり、結果として採用力の基盤を強化していきます。
採用は、企業の価値観を伝える場である
採用の現場においては、「企業が大切にしていることを、より伝わりやすい言葉で伝えたい」という想いで候補者と向き合っています。
理念や価値観は、掲げたり、そのままの言葉だけではなかなか伝わりません。採用というリアルな接点を通じて、どんな言葉を選び、どんな態度で向き合うのか。その一つひとつが、企業の姿勢として候補者に伝わります。
採用は、単に人を選ぶ場ではなく、企業そのものがどういう存在なのかを表現する場でもあります。
だからこそ私たちは、採用を短期的な成果だけで捉えるのではなく、長期的な視点で企業価値を積み上げていく活動として捉えています。